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from    武田由美

スクールソーシャルワーカー、社会福祉士
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​『スクールソーシャルワーカーを知っていますか?』

 私は、たからばこの仕事に加えて、週2日スクールソーシャルワーカー(SSW)の仕事をしています。最近になって新聞やニュースなどでも、増え続ける不登校や児童虐待に対応する専門職としてその名が挙げられるようになったものの、まだ多くの人にとって聞きなれない職種だと思います。まずは、「スクールソーシャルワーカーって何?」というところからお伝えしたいと思います。 

 

 スクールソーシャルワーカーは、教育現場で活動する福祉の専門職(資格は社会福祉士、 精神保健福祉士など)で、子どもたちがよりよい生活を送るために、子どもたちの周りの環境(家庭、友人関係、地域、学校など)を整える仕事をしています。学校や家庭だけでは解決の難しい様々な課題(不登校、いじめ、経済的困窮、児童虐待、発達障がい、LGBTQ、ヤングケアラーなど)を抱える子どもたちやご家族をいろいろな形で支援しています。ご本人たちのお困りごとをじっくり聴き、一緒に解決する方法を考えたり、地域の行政、医療、福祉などの様々な関係機関につなぎ、連携して支援ができるようにしたり、学校との間に入り関係を調整したり、先生方に地域の関係機関の情報提供をしたり、校内のチーム体制を作るアドバイスをしたり、研修会の講師となることもあります。

 同じ相談職であるスクールカウンセラー(SC)さんとよく比較されますが、心理職のスクールカウンセラーさんは相談室でのカウンセリングでその人の心の中の問題に向き合うのに対し、福祉職のスクールソーシャルワーカーは、ご家庭や関係機関に出向き、その人を取り巻く環境に働きかけます。(協力して支援にあたることもとても多いです。)

 ということで、なかなか一言では説明しづらいのですが、子ども達には「学校の何でも屋」とか「世話焼きおばさん」とか「願いをかなえてあげたいおばさん」だよと(その子に合わせてひらめきで)自己紹介をしています。

 

 私自身がこの仕事に出会ったのは、社会福祉士の資格取得のために通信講座で勉強をしていた頃でした。その頃のたからばこは市民団体として活動をしていて、発達障がいのお子さんを持つ保護者の方々からの相談を受けていましたが、市民団体の代表という立場ではできることは限られており、歯がゆい思いをしていました。また、たからばこは「安房を発達障がい理解の先進地域にし、医療、教育、福祉、行政などの垣根を越えた連携の地域モデルを作りたい。」という大それた目標も持っていたので、まさに子どものための連携のど真ん中に入るパスポートを持っているようなスクールソーシャルワーカーの仕事を知り、「これだ!」という思いを抱きました。まだその頃は募集もなかったのですが、数年後に社会福祉士の先輩で、現在は法人の理事でもある大森さんから「スクールソーシャルワーカーの募集がある」と聞いた時には、喜んで応募しました。私のような変わり種が採用してもらえるかどうかは甚だ疑問ではありましたが…。幸運なことに採用していただき、今年で6年目を迎えました。 

 

 いろいろな学校に行き、子ども達の支援に駆け回る日々の中で、これまでに出会った子ども達、保護者の方々、先生方、支援職の方々からは本当に多くのことを学ばせていただき、想うこともたくさんありました。それらについては次回お伝えしたいと思います。

​『あきらめない
​   ~スクールソーシャルワーカー(SSW)として想うこと~』

 前回スクールソーシャルワーカー(SSW)がどんな仕事をするのかを書かせていただきましたが、今回はSSWの仕事を通じて感じたこと、想うことを思いつくままにお伝えしたいと思います。

 

 これまでSSWとして本当にたくさんの子ども達と出会ってきました。様々な状況にある子ども達は、一人残らず本当に素敵で、出会えた奇跡に感謝するとともに、いつも彼らをもっと知りたい、話を聴きたい、そして力になりたいと思うのでした。

 子ども達にはそれぞれの強み(好きなこと、得意なこと、環境的優位性)があり、それに着目することが問題解決の糸口になることが度々ありました。やっぱり「好き」ってすごいことだなあと思うのです。子ども達にも自分の強みに気づき、自信を持ってほしいと思っています。

 進路に関する相談のお手伝いをすることも多いのですが、一番大切なのは自分で決めるということだと思います。小学校から中学校、あるいは中学校から高校に上がるとき、自分で選んで環境を一新し、別人のように活き活きと頑張っている(元不登校だった)子ども達が自己決定の大切さを教えてくれました。

 子ども達には、学校以外の居場所(拠り所)を一つは持ってほしいと思います。学校に行っていない子はもちろん、どの子にも自分が自分らしくいられる場所があるといいなあと思います。もちろん学校は大事だけれど、学校だけじゃないというのも大事なことだと思うのです。

 そしてもう一つ、困ったことがある時には信頼できる大人にSOSを伝えてほしいと思います。自分一人では解決できないことでも、道は必ず開けます。それには私達大人が子どもに信頼され、SOSを言ってもらえるような人間(親、支援者、近所のおばさん…)であることが求められていることも忘れずに肝に銘じておきたいと思います。

 また、SSWの仕事をするうえで私が心がけてきたのは、「人に×をつけない」ということと、「すべての子どもが幸せに生きていく可能性を決してあきらめない」ということです。「幸せに生きていく」というのは「穏やかに暮らせる」とも言い換えられるかもしれません。なかなか事態が動かず、無力感に襲われそうになった時、自分の中にこのルールがあること自体に支えられて「あきらめない」という気持ちを持ち続けて来られたような気がします。時々「あきらめない。あきらめない。」とぶつぶつ唱えたりしています。

 つい先日、現在勤務している学校の職員室の机の上に新たに子機が設置されていました。週に2日しか勤務がなく、ほとんど外出や面談で席を外している私の机の上に…。「一番電話を使うのは武田さんなので思う存分使ってください。」「その電話はまさにいのちの電話ですから。」温かいお心遣いと身に余るお言葉に感激した出来事でした。自分自身も多くの方々に支えられていることに感謝しながら、子ども達のいのちを守り、輝かせるために小学生から高校生までの困難な状況に置かれた子ども達、そしてその子ども達を支える保護者の方々をこれからも全力で応援していきたいと思います。

 

 一人ひとりのお子さんを支援するのと同時に、学校という組織レベル、そして地域社会や社会制度そのものへの働きかけをソーシャルワーカーとして行っていくその積み重ねの先にあるのは、SDGsの目標になっている誰一人取り残さない」持続可能で多様性と包摂性のある社会であり、たからばこの目指す少数派の子ども達ひいてはすべての人が自分らしく生きられる豊かで彩り鮮やかな社会の実現であろうと思うのです。青臭い理想論であることは承知していますが、そうした社会の実現を目指すことは決してあきらめたくないと思うのです。

 SSWとして、NPО法人たからばこの代表として、そして今を生きる大人の一人として、子ども達に残せる未来はどんな未来なのか、そのために何ができるのかをわが身に問いかけながら、一歩ずつ前に歩みを進めていきたいと思っています。「誰一人取り残さない」豊かで彩り鮮やかな社会の実現に向かって

​(たからレターNo.33,34より)
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