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from鈴木千鶴子
保育士
『夢を応援し続けます。』
~僕たちにも夢があります~
はじめまして。私は富津市在住の鈴木千鶴子と申します。
元、和光保育園勤務でした。38年間保育士を勤め平成29年3月に退職しました。
和光保育園職員の時代に「障がい児学童保育」という名目で月一回ボランティア活動をしていました。今思うと平成14年ですので、思い出話になってしまいそうですが、大事にしたい想いと「地域の人」としてやらなければならない使命感は変わらないです。ここがきっと武田さんやみんなの森のスタッフや理解者の皆さんと変わらないし、共感できるところかと思います。まずはスタート時のことをご紹介していきたいと思います。その時の案内文を読んでください。
《言葉が上手に話せないから。ダウン症だから。自分の気持ちを伝えられないから。皆と同じことができないから。などとたくさんのできないことを並べて、同じ年頃の子どもたちと同じ経験ができないでいる子どもたち。自分の得意なことに気づいてもらえないでいる子どもたち。また、わが子に冒険や挑戦をさせてみたいけど、どのように場を作ったらいいのだろうかとお悩みのお母さんたちへ。
義務教育が終わり、子どもたちの進路を考えると親御さんの悩みも大きくなるのではないでしょうか。この子さえ自立していれば・・・。これができれば・・・。と思う前にたくさんの経験をさせ、わが子発見が出来るような手助けができればと思っています。》
これは、障がい児学童保育「夢の会わくわくクラブ」の発足に向けて、障がい児を持つ親御さんへの呼びかけの文書です。私は、保育園で心身面につまずきのあるお子さんと関わる仕事を多くしてきましたが、当初は、その子と一日どう過したらよいのか、この子にとってどんな手助けができるのかと試行錯誤の日々でした。しかし、経験を重ねる度に、見えてくる子どもの姿がありました。それは、発達の相異こそあれ、子ども一人一人のペースで成長していることです。そして、私自身の保育者としての成長を育んでくれたのも、障がいを抱えた子どもたちであり、その親御さんたちでした。
ところで、保育園を卒園した小中学生や、思春期を迎えていく高校生と関わって、色々な心の葛藤を聞く場面がありました。心を閉ざし言葉によるコミュニケーションをもたない子どもたちと、筆談を交えて心の内を聞いてみると、彼らは同年齢の健常児と同じく、親子の信頼関係であったり、思春期の体のことについて悩んでいるのです。ところが、それを聞いてもらえる人がいない苦しさも持っている訳です。また、親御さんにすれば、わが子が表現してくれなかったことのもどかしさと、親として面倒を見なければならない責任感が、親子を家庭の中に引きこもらせてしまっているのでした。そんな親子の葛藤を受け止めてくれる第三者がいて、親から離れて行動できたり、与えられたことに向かえる自分発見をしてほしい。また、自立しようとしているわが子の姿を認めたり、心から受け止められるゆとりを持った親育ち。そんな関わり方で障がいを抱えた親子を支えられる地域社会でありたいという想いで、「夢の会わくわくクラブ」の発足ができました。
「心を閉ざし言葉によるコミュニケーションを持たない子どもたちとの筆談」
私は言語表現ができないお子さんと「筆談」で、子どもの本当の気持ちを伝えてもらうことを保育の中でも活用してきました。ペンを持っているお子さんの手を通して会話をします。もちろん、お互いの信頼関係があって成り立つことですので、そう簡単ではないことを付け加えます。保育園児から高校生までのお子さんと会話し、今の自分の立場や心の内側や、まわりへの願い事など様々です。もちろん、趣味やテレビのことなど世間話もします。とっても印象的なのは、自分が人間として認めてもらえたと実感し喜んでいる様子が見られることです。具体的な内容等はまたご縁があったらお伝えしたいです。
そして、筆談による思春期のお子さんのことをまとめてみました。
心を閉ざし、言葉によるコミュニケーションを持たない中・高生の葛藤(筆談によって)より
親との葛藤・・・
自分が生まれたことでお母さんが悲しんでいる。
成長している自分を信じて欲しい。
生活面の葛藤・・
「一人でやりなさい」しかし任せてくれない。
“できない”と思い込まれている。
身体的葛藤・・・
年齢相応に成長していることを知ってほしい。
思春期の身体の変化やシステムを知りたい。
話したいけど上手く言えない。
表現(言葉)の葛藤・・
みんなに変だと思われる。笑われる。
表現と裏腹な心理を察して欲しい。
仲間との葛藤・・
みんなと同じようにやりたい。一緒にいるだけで足。
年相応の興味を実現したい。
人生への葛藤・・
いつも親と一緒でいいのか。兄弟姉妹との関わり方。
施設に行くであろう自分。
これをまとめたのは、今から15年も前になります。すっかり成人してすでに30歳にはなっています。それぞれの人生を歩んでいますが、思春期時代の悩みが解決し本人にとって思った通りの人生をたどっているかどうかは分かりません。「夢の会わくわくクラブ」の時間が成長の途中段階において関われたことが、親子にとって有意義であったと思ってもらえたらなによりだなぁーと想像しています。
今、「わくわくクラブ」はお休み中です。社会も学校も地域も、時代の流れとともに変わってきました。良くなってきたと実感できることもあります。でも、まだまだ抱える問題もあると思います。何より、子どもが子どもらしく、人間らしく、一人の人間として誇りを持って生きてほしい願いは恒久的に意識していきたいことです。今求められている「わくわくクラブ」を、「たからばこ」の活動をきっかけに改めて考えていきたいと思いました。
※和光保育園・・・社会福祉法人 わこう村 和光保育園(http://www.wakoh-mura.com/)
昭和の雰囲気漂う園内でゆったりの時間とたっぷりの経験を子どもたちに、出会いふれあい育ち合いの広場を大人たちに提供し、 保育園と家庭の共同で子育てを行う実践をしており、全国さらに海外からもたくさんの人が視察に訪れている。
(たからレターNO.22より)