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社会福祉士・精神保健福祉士/相談支援専門員、理事

たからばことの出会いから』

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from大森 匠

   たからばことの出会いは4年ほど前に富津市在住のある親子が「安房地域に引っ越すかもしれない」「安房地域でどこを頼ったらいいか紹介してほしい」という要望にお応えして、前の三坂の事務所を訪ねたのが始まりでした。三芳出身、三芳在住の私でしたが、関わりを持ったのはこの時が初めてでした。

 

 武田さんを始め、皆さんとのお話の中で印象的であった内容が2つあります。

1つは、『この地域をノースカロライナのようにしたい』という内容でした。(発達障がい理解の先進地である)ノースカロライナのように発達障がいへの無理解による二次障がいのない地域にしたい、さらには、「社会の側を変えていきたい」という考えがあるということを理解しました。だからそれによって、物事の見方や考え方が遠視傾向だということに驚きを覚えました。この『遠視傾向』という言葉が、印象的であった内容の2つめでした。

私は自分の職業のアイデンティティをソーシャルワーカー(以下、「SW」)だと認識しています。私はSWを「人と人、人と環境の接点に立ち、その関係性構築の促進者である」と自覚しています。SWの働くフィールドには大まかに個人と個人によるレベルと、組織間のレベルと、地域の中というレベルがあります。たからばこの考え方がこのそれぞれのレベルを横断的に考え、実践を志向し、社会の側への視点を持っていることにとても感銘を受けたことを覚えています。これは私の目指すSW像と重なるものでした。そして、自分の住んでいる地域でこのような実践を試行錯誤している皆さんと出会えたことに感動しました。

 

 私はSWなので色々な方との出会いがあります。この出会いは残念ながら困難な状況の中にいらっしゃる方との出会いが多いです。人と人、人と環境の接点・摩擦点に身を置いていますので当然のことではあります。この時にいつも考えるのは、「この方のこの困難はこの方だけのせいなのだろうか」ということです。この方の困難を困難と思えない周囲の理解や、状況・環境が整っていれば、この困難は消出するか若しくは軽減されるのではないかといつも思っています。

 

 たまたま少数側になった方に対して「お前が変われ」「お前が合せろ」という雰囲気はとても優しいとは思えません。現実の物事はいつも多数派が話を進めますが、一方で、革新をもたらしてきたのは少数派です。多数派の気づきを促し、誰も疎外せず、全てを巻き込む姿勢を整えることは、誰にとっても住みやすい社会・地域なのではないかと考えます。多数派に身を置いている者・身を置いていると考えている者は、一生、どんな状況においても多数派でいられると考えているのでしょうか。「我が事」と認識できるかどうかも重要なポイントです。

 

 多数派と少数派の接点に身を置き、「どのようなポジションをとり、どこを見て、どちらに進むのか、強みはどこか、潜在能力を発揮できる機会はどこか」私はSWとして、個人、組織、地域・社会に対していつもこれらを模索しています。たからばこはこれらのことを組織として模索しています。ここに私はたからばこへの強い共感性と敬意を感じています。

 

 『ノースカロライナのように』『遠視傾向』には大変刺激を受けました。障がい者福祉を生業とするものの目標の1つは、共生社会の実現です。私のたからばことの出会いは、共生社会の実現のために走るスペシャルドリンクです。

 

                                           

​『日々の業務で大切にしていること』

 私は自分自身のソーシャルワーカー(以下、「SW」)としての在り方を「人と人、人と環境の接点に立ち、その関係性構築の促進者である」と自覚しています。その接点には必要に応じて介入し、それぞれの潜在能力の発揮の機会を願い、行動します。この時に大切にしているのは、その人には、今がその人やその環境にとって、「幸福」であっても「不幸」であっても、常に主役でいてもらう演出を怠らない、結果だけを提供しない、ということです。

 私がSWとして業務に向かう際に自分自身に言い聞かせ、律するための5点は以下です。対象はクライエントでも、ご家族でも、組織でも、同僚・部下・仲間でも、腹に据えることは基本的には同じと考えています。

 

  • エンパワメント

 ・その人の潜在能力を信じる、見つける、再発見のお手伝いをする

 ・「できない」「困る」「無力」ではなく、「自分だけではどうしようもなく、自分の本来の力を発揮できない状況・環境 

 にあるのではないか?」という理解と仮説・・・SWとしてどこに介入するのか?

  • ストレングス

 ・着目するのは「強み」  強引でも「良いところ」を見ていく、見つけていく

 ・困りや悩みに「例外」は無いのか? 日常の「対処」はどのようにしているのか?

  • インクルージョン

 ・排除しない 巻き込む

 *1度排除すると癖になる、正当化するようになる、他者のせいにして「我が事」から外れていく

  • モチベーション重視

 ・聞く・聴く・訊く・利く・効く

 ・否定しない

 ・プロセス評価

  • 自己覚知

 ・「私」と「他者」は違うという意識の徹底と、その何度もの確認

 ・自分の価値観・優先順位との出会い・直面化

 ・自分の思考・考え方の傾向(クセ)の自覚化・視覚化(トリセツ)

 

​ 私には業務とは言え、他人の「権利」をこねくり回そうとする「私」は何様なのか、という自己を点検する機会が必要です。また、人と環境の中で仕事をしていくには自分を鍛え続ける必要があります。「こんなんで役に立っているのか」という焦燥感、「まだまだ全然ダメだ」という絶望感、「何もかもが足りない気がする」という枯渇感等が私の原動力だったりもします。そのような自分もポジティブ志向に忍ばせ、認めながら(自己肯定感・セルフよしよし)、皆さんと一緒に考える機会を大切にしていきたいと考えています。

(たからレターNO.19,20より)

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